相変わらず芽衣の行方はつかめないまま時間だけが過ぎて行った。
もちろん、俺がその気になれば芽衣の居場所を見つけることなんて容易いことだ。
それなりの伝手もあるし、携帯の電源が入ったままであれば調べることもできる。
でも、今はそれをするつもりはない。
芽衣のことが気にならないわけではないが、自分の気持ちを整理するのが先だと思う。

「小倉がいなくて平気だって言う割には、ボロボロだな」
秘書であり親友でもある雄平は遠慮なくものを言う。

「すまない」
「謝るくらいなら注意してくれ。仕事にならないなら休んでくれ。小倉がいないと仕事にならないなら探してこようか?」
「だから・・・」

さっきからこうして謝っているじゃないか。
商談相手の社長の名前を間違えるなんて自分でも最低だと思うけれど、やってしまったものは仕方ない。

「ここんところ、ずっと小さなミスの連続だぞ」
「わかってる」
「少し休みをとるか?」
「バカ言え」
そんな余裕がどこにあるんだ。

「これ以上続けば親父さんに呼び出されるぞ」
「心配するな。もう兄さんに呼び出された」
「はあ?」

「今日、朝っぱらから電話があって『話があるから今夜あけておけ』って言われたところだ」

こうなったのも自業自得。兄さんに叱られてくるさ。