数日後、いつもと変わらず食事をしようとメールが来た。
先日のことには一切触れず何もなかったかのような内容に少し困惑した。
それでも、四年も付き合った人だから最後くらいはちゃんと話をしようと会うことにした。

蓮斗の部屋で会うのは気が引けて、待ち合わせたのは駅前のカフェ。

「もう終わりにしましょう」

きっと蓮斗も同じ気持ちだろうと私の方から切り出した。
しかし、

「嫌だよ」
「え?」
「俺は分かれないよ」
「だって・・・新しい彼女がいるよね?」

この間マンションに入れていたじゃない。

「あれはただの友達」
「そんな馬鹿な・・・」

「俺は芽衣と別れないよ」

それからはいくら話してもらちが明かず、「とにかく私は分かれます」と言い切ってカフェを出た。

それからしばらくはメールも電話もなかったから納得してもらったと思っていたのに、七月に入っていたずら電話や迷惑メール、会社のホームページにまで私を誹謗する書き込みが始まった。
初めのうちは私も我慢していた。
けれど、内容も頻度もどんどんエスカレートしていって次第に会社にも居づらくなり、8月末には会社を退職した。
もともと蓮斗の口利きで縁故入社したところだったから近いうちにやめなくてはと思っていたけれど、負けて辞めるようなやり方には悔しさが残った。
でも、仕方がない。今は蓮斗と縁を切ることだけ考えようと、アパートも1kの狭いところに引っ越しをした。
これで心機一転。
臨時採用だけれど新しい仕事も決まって来月から働きだす。
その前に、自分への気持ちにけじめをつける意味で私はシンガポールにやってきた。