昨日の朝まで、芽衣は電話にも出ていたしメールだって返ってきていた。
それがいきなりの音信不通。何かあったんじゃないかと心配になった俺は何度も何度も電話をかけた。
しかし、何時間たっても芽衣の電話はつながらないまま。
土曜日だから外出でもしたかなと考えてはみたが、病院へ行くと言っていたこともあって不安は増すばかり。
こんな時は雄平に聞くのが一番状況が分かるだろうと電話を入れた。



「はあ?どういうことだよ」
「どういうって、辞めたいって言われて辞表を預かった」

何でもないことのように言われ久しぶりにブチ切れてしまった。

「なんで辞表何か受け取るんだよ」
「お前がちゃんと芽衣を見ていろよ」
冷静になって考えれば八つ当たりでしかない。
それでも俺は持って行き場のない苛立ちを雄平にぶつけるしかなかった。

「そもそも、芽衣が会社を辞めたいって言ってきたときに、なんで俺に言わなかった?俺と芽衣が一緒に暮らしているのをお前は知っていたはずじゃないか」

元カレとのことがあって、雄平が芽衣のことを快く思っていないのは知っている。
俺に言わせれば芽衣だって被害者だが、雄平には芽衣のせいで俺が被害を被ったように見えるらしい。

「奏多には言うなって口止めされたんだ。それに、小倉が自分の意志でお前のもとを離れようとしているのに、止める理由がどこにある?」
当たり前のように言い放つ雄平。

俺は返す言葉を失った。

きっと、俺の周辺には雄平と同じように芽衣のことを見る人間も多いだろう。
芽衣はそれがわかって逃げ出したのかもしれない。
全ては俺の責任ってことか。