その後の琴子さんの行動は素早かった。

電話を何本かする間に私の行き先の手配をして、マンションにいた藍さんのお母さんに事情を説明して明日の受診後に病院へ迎えに来る段取りをつけていた。

「芽衣さんのことは私どもで間違いなく保護しますので、ご心配なさらないでください」
穏やかな笑顔で言う琴子さんに、お母さんも反対することはない。

「芽衣ちゃんはそれでいいの?」
ただ一人藍さんだけは、本当にいいのかと聞いてきた。

きっと、奏多に話すべきだと思っているんだろう。

「彼には時期が来たら話します。今は自分の生活環境を整えるのが先だと思うので」
「でも、」
やはり藍さんは納得できないみたいで、何か言いかけて言葉を止めた。

「今の芽衣さんには考える時間が必要なのよ、きっと」
藍さんの肩にそっと手を置いた琴子さんが言ってくれる。

「ごめんなさい、藍さん」
私のことを心配していってくれているのに。

「いいのよ。芽衣ちゃんがそれでいいなら、もう何も言わない」
「・・・すみません」

心配してくれる藍さんやお母さんのためにも、こんなに良くしてくださる琴子さんのためにも、しっかりしよう。
まだ出てもいないお腹に手を当てながら、どんなことをしてもこの子を守っていくんだと決心していた。