「大丈夫よ、仕事柄個人情報を漏らすようなことはしないから」
私の不安が分かってしまったらしく、琴子さんの方から切り出してくれた。

でもなあ・・・

「アパートを解約して、行くところがないんでしょ?」
「それはそうですが」
だからって見づ知らずの方に迷惑はかけられない。

「頼るお友達もいなくて、逃げ出そうとしているんでしょ?」
「それは・・・」
これ以上藍さんの家にお世話になる訳にもいかないけれど・・・

「妊娠、しているのよね?」
「・・・ええ」

やっぱり全部聞かれていた。
だから、こんな提案をしてくれたんだ。

「難しく考えることはないわ。一週間でも、十日でも、一ヶ月でも、あなたが落ち着くまでいればいいの。そのために私たちは活動しているんだから」
「でも・・・」

私はDV被害者でも、生活困窮者でもない。
ただ自分の身勝手で行き場を失っただけ。自業自得でしかないのに。

「私たちはどんな小さな命でも、同じように生きる権利があると思って活動しているの。あなたを守りたいって言う前に、おなかの赤ちゃんを守ってあげたいのよ」

なるほど。そういわれれば、琴子さんが必死に誘ってくださるのも理解できる。

「来てくれるわね」

コクン。
私はうなずいて、お世話になることを決めた。