翌日、日曜日。
藍さんのマンションの敷地内にある小さな緑地に、私は降りてきた。
芝生と小さな遊具とベンチがあって、住人らしい親子ずれが遊んでいる。

藍さんとお母さんのおかげで、体調もかなり回復し食事もとれるようになった。
落ちてしまった体重のせいで体力はまだまだだけれど、こうやって外の空気を吸いに出れるようにもなった。

ヨイショッ。
近くのベンチを見つけて腰を下ろす。

明日の月曜には病院の予約があって、経過が悪ければ入院になる。
結構食べれるようになっているから入院ってことはないと思うけれど、九州までの移動の許可は出ないかもしれない。
そうなったら、私はどうすればいいんだろう。

「ホテルを借りるって言えば、藍さんに反対されるわよね。でもアパートは解約してしまったし、他に頼れる友人もいないし・・・いっそ黙って逃げ出そうかしら。ダメダメそれはできない。ここまでお世話になった人を裏切るなんて、人として最低。この子のためにもどこかに隠れないといけないのに」
ブツブツと独り言をつぶやきながら、お腹をさすった。

「あのー」
「えっ」

いきなり後ろから声をかけられ、ビクンと体が反応した。

「突然すみません」

もう一度声がかかり私も振り返る。

「あ、あなたは」
そこにいたのは見覚えのある顔だった。

「覚えていてくださいました?」
にっこりと笑う女性。
「はい。パーティーでお目にかかりました」

そうだ、この人は平石家の関係者。
マズイ。
直感的にそう感じた。

「お隣いいかしら?」

私が頭の中で色々思いを巡らせているうちに女性は隣に座ってしまった。