「芽衣ちゃん上がって」

部屋から顔を出し藍さんが言ってくれるけれど、やはり動けない。
荷物もみんな藍さんが持って行ってしまったから逃げ出すこともできないけれど、やはり足が動かない。
困ったなあと立ち尽くしていると、

「さあどうぞ」
四十代くらいの女性が現れた。

きっと藍さんのお母さん。
藍さんに口元がそっくりな美人さん。

「突然お邪魔してしまって」
お母さんがどこまで事情を知っているかはわからないけれど、上がりこむのには抵抗がある。

「いいんですよ。主人も出張であと二週間は帰ってきませんからゆっくりしてください」
「・・・ありがとうございます」

ここまで言われると上がるしかなくて、私は藍さんのお家にお邪魔することにした。