30分後。
着いたのは都心から少し離れた場所。
マンションが何棟か立つ中の一つに車が止まった。

「ここは?」
「私の家よ」
「藍さんの?」
「そう。入院が必要だって言われた芽衣ちゃんを、一人でホテルには置いておけないでしょ」
「でも」
「いいから家に行きましょう。話はそれからね」

ここまで来て逃げ出すわけにもいかず、私は藍さんの家について行くしかない。
郊外にあるマンション。
奏多のマンションとは違って、周辺には緑が多くて少し先には公園が見える。
自転車に乗る子供たちや親子ずれの姿もあって、ここは住宅街なんだなと実感した。

「さあ、行きましょう」

藍さんがまた荷物を持って、私の前を歩いてくれる。
エレベーターに乗りボタンを押したのは最上階の二十階。

すごいなと驚いていると、エレベーターが開いてすぐに玄関があった。


「どうぞ」

えっ?
藍さんが玄関を開けた瞬間、私は固まった。

「藍さん?」
「ごめんね、私実家暮らしなのよ」

そう言って、私の荷物を持った藍さんが部屋の中へと入って行く。
イヤ、ごめんって言われても・・・

しばらく、私は玄関を動けないでいた。