私の実家は九州の田舎町。
父は中学の体育教師で、母は看護師。
忙しい両親はいつも留守がちだった。
近くにおじいちゃんとおばあちゃんが住んでいたせいもあって寂しさを感じることはなかったけれど、お母さんが家にいてくれる友人がうらやましかった。
だからかな、基本的には一人生きていける自立した女性を目指したいけれど、結婚して子供ができれば専業主婦になって家族を支えたい。そう思って成長した。
それが、

「何でこんなことになったんだろう」

田舎の地味な女の子だったはずが、傷心旅行にシンガポールまでくるなんて想像もしていなかった。

高校卒業の時、地元の大学を進める父さんに逆らって東京の大学に進学を決めた私。
母さんは反対せずに応援してくれて、おかげですんなり上京することができた。
実家を出てしまえば気楽な独り暮らし。
実家からの仕送りもあって私はバイトもせずに勉強とサークルの日々を送った。
今思えばお気楽に遊んでいたんだと思う。
サークルで知り合った同い年の蓮斗に告白されて、深く考えることもなくうなずいた。

初めての1人暮らし、初めての彼氏。
まだ子供だった私はとにかく浮かれていて、きっと恋することに恋をしていた。
蓮斗が来いと言えば学校を休んででもいったし、デートだっていつも蓮斗のペース。
何でも彼の言いなりだった。
それでも当時の蓮斗は優しくて、私のことを喜ばせようとしてくれた。
だから、私も蓮斗に夢中になってしまったのかもしれない。