「とはいえ、あなたに責任がないのもわかっています。あのままことが収まるなら何も言うつもりはありませんでした。しかし」

そこで言葉を切って、課長は私をじっと見据えた。

「昨日の平石家のパーティーに同行したのはあなたですね?」
「はい」
嘘は付けなくて素直に答えた。

「先ほどの奏多の様子から、一緒に住んでいるように聞こえましたが?」
「はい」
一時的にとは言え間違ってはいない。

「正直に言います。あなたのことを知らない人間が今のあなたの行動のみを見れば、お金に執着して男性の間を渡り歩いているように見えるでしょうね」
「そんなあ」
ひどい。

でも、自分ではその気はなくても、周りから見れば私は奏多に群がる女の1人なんだ。
金持ちにたかるビッチにでも見えているのだろう。

「きつい言い方ですが、これが現実です。だからこそ、自分の立ち位置をはっきりしてください。奏多との関係を続けていきたいのなら身辺整理をすること。その気がないのなら秘書としての立場に徹すること。どちらかしかありません。わかっていただけますか?」

「はい」
悔しくて涙が出そうになるのをグッとこらえた。

この時になって、私はとんでもない人に恋をしてしまったんだとやっと気が付いた。