「……俺は、強いんだ。……金されあれば、強いんだ……」

その言葉に、フィオナとエヴァンはザクロを見つめる。しかし、シオンが「違う」と一瞬で否定した。

「本当に強い人は武器は持たない。人に対して暴力も振るわない。本当に強い人というのは……人を心から信じ、愛することができる人だ」

そのままザクロは項垂れ、シオンとサルビアに連行されていく。その様子を見ながら、フィオナはポツリと思ったことを呟いた。

「人は、みんな何かに囚われていないと生きていけないのかもしれない」

食べ物、お金、愛情、家族、友達、宗教、人は何かにしがみつき、囚われている。でも、その欲を全て捨ててしまえば人の中には何も残らない。だから、人は何かに囚われているのだ。

「幸福を手にするか、それとも堕ちてしまうのか、それは人次第。それを犯人から学ぶなんてね……」

私は何に囚われているんだろう、少し恐怖を感じているフィオナの手が温もりに包まれる。隣を見ればエヴァンが微笑んでくれていた。

「大丈夫、フィオナが堕ちてしまいそうになったら僕が全力で止めるから」

早く帰ろう、みんな待ってる。

エヴァンにそう言われ、フィオナは手を引かれながら歩き出す。エヴァンは眩しいくらいの笑顔で、フィオナの胸が温かくなっていった。