(こんなに素晴らしいものを作る人たちをあの団長は……)

こんなにも何故怒りを覚えるのか、フィオナにはわからなかった。彼女たちと関わったのはほんの少しの間で、今までは何も感じてこなかったはずだからだ。

(どうして、こんなにも心が動くのかしら……)

答えは出ないままだ。しかし、次の通路に入った時、床に倒れているキキョウが目に入り、その疑問は頭から消えてしまう。

「キキョウさん、大丈夫ですか?」

フィオナは駆け寄り、キキョウの肩を軽く叩く。キキョウは頭から血を流し、意識を失っていた。しかし、頭には使われていない布が巻かれて止血されており、脈もきちんとある。

「ご自分で止血されたのですね……」

最悪の事態ではないことにフィオナがホッとした刹那、背後から殺気を感じ取る。その殺気を放ちながらその人物は近付いてきた。そして、何かが振り下ろされる音がしてフィオナは素早く振り向いてその手を掴む。ナイフを手にしていたのは、団長のザクロだった。