「夢の中にもあったわね、黒いバラの花びら……」

悲劇を強調するかのように、結婚式の事件では黒いバラの花びらを新郎が持っていた。夢の中でも、その花びらは一面に敷き詰められていて、とても不気味に思う。

「シャワーを浴びないと」

水を飲んで心を落ち着かせた後、フィオナは汗で汚れた体を綺麗にするため、着替えを手に浴室へと向かう。今日も特殊捜査チームでの捜査がある。

シャワーをぼんやりと浴びている間、フィオナの頭の中には、まるで呪いの言葉のように夢の中で花嫁が言った台詞が回っていた。



「フィオナ、一緒に行こう!」

幼なじみであり、同じ特殊捜査チームの一員であるエヴァン・カランコエが迎えに来たので、フィオナはかばんを手にする。

「先に行ってくれてもいいのに」

フィオナがそう言うと、「いいでしょ?別に」とエヴァンは頰を赤く染める。そして、最近学校で起きたことなどを話し始めた。

笑ったり少し悲しそうな顔をしたり、コロコロと表情を変えるエヴァンの隣で、フィオナは黙って話を聞く。その表情は無表情で、何を考えているのかわからない。