シオンとフィオナが質問をそれからいくつかしたものの、ジンから返ってくる解答は事件につながるようなものは一つもなかった。

「お時間をいただき、ありがとうございました」

これ以上いても収穫はないと判断し、フィオナとシオンは応接室を後にする。二人の廊下を歩く足取りはどこか早い。一刻も早くこの場所から立ち去りたかった。

「おや、もうお帰りですか?」

ほうきを手にしたガクが現れ、シオンが「はい。お邪魔しました」と頭を軽く下げる。そしてそのまま通り過ぎようとしたのだが、フィオナの腕が不意に掴まれ、フィオナの足が止まった。

「どうかされましたか?」

フィオナが訊ねると、ガクは無表情のまま「この家からいなくなった人物、私は知っていますよ」と淡々と言う。シオンが「誰なの?」と訊ねると、ガクは胸ポケットから一枚の写真を取り出した。ベビーベッドに寝かされた二人の赤ちゃんの写っている写真だ。

「今から三十年ほど前のことです。この家で双子が生まれ、片方が施設に送られました。名前はマーティー・ブラックローズ様です」