「……ん……。……っ、いっ……」


 とろとろと微睡みに浸かった意識のまま、頭だけ寝返りを打とうとして、ぐわわわわわん、と脳に響いた痛みに襲われた。

 痛い。めちゃくちゃ痛い。耳元で銅鑼を鳴らされてるかのようだ。実際にやられたことないけど。

 掌の付け根で痛む頭を抑えながらゆっくりと起き上がり、一人暮らしを始める際に家具屋で一目惚れして買った、木目調のオシャレなテーブルの上に溢れる酒の缶や瓶を、ぼんやりと見た。


「……あー、いた……」


 カーペットの上で雑魚寝していた所為で、頭だけじゃなくて身体中が痛い。


「まさむねー」


 隣で焼酎の瓶を抱えたまま床に転がる、昨日彼女にフラれたばかりの男を揺すって起こそうとする。

 朝だし髭は生えているものの、顔ばかりは整った男は、小さく唸って、長いまつ毛の下からとろんとした薄茶色の瞳を覗かせた。