『私ね、友達いないの。』

衝撃だった。こんなに可愛くて、明るくて、何より優しい里桜ちゃんが…?私は信じられなかった。

『周りの女の子からは、“ぶりっ子”とか“猫被り”とか、散々言われてる。』

「えっ……………。」

『けど、それだけじゃない。悪口言われてる私の反応が鈍くてつまらなかったのかな、あの子達は、言葉だけには収まらなくて今度は行動にまで移してきた。』

つまり、“いじめ”が始まったということだろう。

『まず最初は、いろんなものを隠す事から始まった。リコーダー、上履き、教科書、給食着、消しゴム…もっと他にもね。たくさん隠された。壊された事もあったし、手元にそれが戻ってこない事もあったよ。』

明らかに辛い話なのに、里桜ちゃんは苦笑しながら話し続けた。

『その後は……、もう思い出したくないけどね。暴力を振るわれる事も多くなってた。お金を要求される事も何度かあったな。』

「……それって、先生は何もしてくれなかったの…?」

『……、その子達は先生の目に付かないところでこそこそとやってた。そういう悪知恵がよく働くような子ばかりだったから…。でもね、両親が私の異変に気付いて、すぐ学校に問い合わせてくれたの。そしたら凄く大変!いじめてた子達とその親、学校側、私と私の親が集まって〜って感じ、大事(おおごと)になったよ〜。』

「そうなんだ…………、いいご両親だね。」

『うん!パパもママもすっごく優しいんだ!だから大好き!………あっ、それでね。肝心なところはこれからなんだ。』

肝心なところとは、里桜ちゃんが泣いていた理由の事だろう。

『…私ね、引っ越すの。』

「えっ…………………?」

頭が真っ白になるとは、こういうことを言うのだろう。この時、私は一瞬で悟った。

_別れの時間が、刻々と近づいている。_