__三ヶ月前。

あの日は、紫音の二十九の誕生日だった。

ここ数年、恒例となった私と紫音の義兄・朝陽君と三人での誕生日会の帰り道にあの事故は起きた。

ほろ酔いでご機嫌だった私は、二人から少し遅れを取り、鼻歌交じりで満月を見上げながら深夜近くの横断歩道をゆっくり歩き始めた。

その時、右後方からバイクの耳障りな走行音が響いて来た。


『莉子!』『危ない!』


前方から二人同時に叫んだ緊迫感溢れる声をうっすら耳にしつつ騒音の方を振り返ると、目が眩みそうな眩い光に包まれ無意識に顔をそむけ目を瞑った。

その直後、急ブレーキ音と共に誰かに思い切り強く抱き締められながら強い衝撃を受け、宙を舞う感覚にぼんやり身を委ねていた。

そしてコンクリートに叩き付ける衝撃音と共に少しだけ我が身にも衝撃を感じた。

直後に私を包む腕の力が一気に緩みその重みを一身に受けながら、ぼんやりと目を開いた。


『莉子っ! 紫音っ!』


すると朝陽君が今まで見たことない、驚愕の一言ではとても表せないほど切羽詰まった表情で目を見開き、私と紫音を交互に見下ろしていた。


『莉子! わかるか?』