じりじりと肌を焼く太陽、厚いアクリル絵の具で塗ったような雲、夏だけに聞こえる蝉の声、そして汗。
あなたの前じゃ、あの太陽もただの線香花火の火玉と同じで私の目にはあなたしか見えない。

私達はこの暑い中、昔からよく来ていた神社のそばにある腰掛けて座っていた。腰掛のそばには春翔の買ってもらったばかりの自転車があり、そのカゴにはタオルや中身のなくなった青い水筒が入れられていた。
ここは、神社や周りに生えている木々で日陰になっていて涼しく、気持ちがいい。
「夏だね」
あなたの放った一言に、そんなの言われなくても分かってるよと思いながら私は
「そうだね」と返す。
「僕、夏が1番好き」
そう言うと思った。でも私は夏が1番嫌い。
「私も1番好きだよ。夏が。」
「だよね」
私はあなたの''夏が好き''という言葉よりも''夏夜が好き''の言葉が聞きたい。
こんな瞬間でも自分を好いてくれることを考える私はどうかしているのだろうか。
Tシャツの首元を持ってパタパタと仰いでいる君にさっき水場で濡らした髪の毛から水滴が頬へ首へと流れていく。暑い日差しで焼け始めた君のこんがりとした顔には、1つの小さなにきびがぽつんとある。