それが小さな違和感のはじまりだった。

でも、最初のうちはそんなに気にしていなくてーー。




「こうっ!ここで腕をあげて」

「え、え、こう?」

「芽生ちゃん、ぎこちないよー!」


なんて萌花の声が更衣室の奥の大きな鏡がある部屋に響き渡る。

彼女だけじゃなくて、店長も一緒にダンスの練習をしていた。



「そ、そんなヤバイ……?」


本当はそれぞれ動画とかで練習をしてくるんだけど、私が下手すぎて教えようって話になったらしい。



「ふふふ、逆に萌えるじゃない?」

「確かに、喜ばれそうですね」


何故か笑う店長に、萌花が同意する。下手で上手に踊れてないのにお客さんは喜ぶっておかしくない?



「ほら、下手だけど下手だけど、一生懸命踊る素人っぽい姿が可愛いって思ってくれる人もいるからねぇ。うふふ」

「どじっ子☆マニア向けってことだよ!芽生ちゃんやったね!」


全然、嬉しくない!!


でも、完璧にこなしちゃうより、親近感は沸くのかもしれない。せ、先輩のことの様に……。

自分でも手が届きそうな、近い存在って。いや、別にお客さんと近くなりたいって訳じゃないんだけど。