あんなに爽やかな顔してるのに、物凄い音痴……。
「ね、凄いでしょ」
私が唖然としていると、隣に腰をおろす紗央がクククッと笑いを我慢している。
「う、うん。すごい……ぶはっ」
「芽生、そんなあからさまに笑わないの!」
「だ、だって……」
先輩たちには悪いけど、思いっきり吹いてしまった。
「あー、芽生ちゃん。お前、笑いやがって!」
「ひどいな~」
マイクを持ったままの誠先輩の声と尚輝先輩の穏やかな声が部屋の中に響き渡る。
それだけで、この場の雰囲気が和み心がほっこりとる。
次も歌いやすくなったし、緊張して糸が緩んで肩の力が抜けた気がした。
格好いい先輩も素敵だけど、完璧じゃないんだと。自然と笑みが浮かんで、親しみが沸いてきた。