あれ、私なんかおかしいな。
はじめてそう思ったのは、確か中学の時だった。





「望、あんたちゃんとやってるの?」

「うん、元気元気~。学校もちゃんと行ってるよ」

「まさか!彼氏が出来て忙しいんじゃ?」

「違う違う、バイトのが忙しいから」


スマホの向こう側から聞こえてくるのは、母親の声だ。
春休みに家に帰らなかったから、変に心配しているみたい。



「食べ物とか日用品とか足りてる?」

「だから大丈夫だって」

「あ、この間、お姉ちゃんが帰ってきてねアキちゃんが……」

「うん」


親達の初孫でもある、姪っ子のアキちゃん。
声だけでも分かる。お母さんがアキちゃんの話をする時は声がワントーン上がり、とても嬉しそうに話す。


私は、親に孫の顔なんて絶対に見せてあげられないんだろうな。
子供は嫌いじゃない。むしろ好きなのに、自分の子供は作れないんだろうな。

別に今の時代、結婚しなくてもおかしくないんだろうけど。
心の中にある罪悪感はいつになっても消えない。



誰にも言えない。家族には、親には絶対に言えない秘密──。