私の手に持つ防犯ブザーを見て、大きなため息を吐かれる。



「こんなもの用意して、僕は疑われてるんですか?」


最初に声をかけられた時とは全然違う強気な声色。怒っているんだという事が伝わってきて、なんて返したらいいか分からない。
熱のせいなのか、恐怖からなのか寒気が走り出した。



「そんな顔をされたら、僕が悪いみたいじゃないですか」


喉が詰まって声なんて出ない。



「親切に色々教えてあげたり、せっかく助けてあげたのにさぁ」


時が止まったみたいに、動けないのに、背中に嫌な汗だけが流れていく。



目の前の道路に車が何台か通り過ぎて、次のバスがやっと来た。
ガクガクと身震いをしながらもなんとか立ち上がったところで、





「青山伊吹の秘密を知ってるって言ったら?」


男の人がはっきりとそう口にした。