「お待たせ、萌花」


急いで着替えれば、"可愛い"と褒めてくれて嬉しいと思ったのもつかの間。



「でも、ちょっと……」

「えっ、何?」

「目、腫れてる」


すぐに萌花のダメ出しが生じる。



「あ、うん。ちょっと昨日ね……」

「少しタオルで冷やそうか」

「うん」


せっかくアイメイクもしたのに、台無しだよ。シュンとしてれば、彼女が私の頬に手を当てる。



「やってあげよっか?」

「え、萌花が?」

「萌花じゃ不満?」

「うーうん、お願いします!」


萌花が自分のバックからポーチを取り出して、私の向かいに座る。
イブが好きな筈だけど、この萌花との女の子のノリも不思議と居心地が良い。



「て言っても、人のメイクってはじめてなんだよね」

「えー、大丈夫なの?」

「多分」


緊張のせいか萌花の手は震えていた。
大きな瞳はいつよりずっと真剣で、集中で唇が尖っていた。