「私、萌花になるところ見てみたい」

「……や、だよ」

「ねぇ、お願い、イブ」


視線を反らすイブにじっと視線を向けると、諦めたように息を吐く。

私はずるい。弱味を握っているのだから、コイツが断れないのを知っている。




この部屋に入るのは大きくなってから三度目だ。

一度目はクリスマスの朝。勝手に入って萌花を目撃した日。二度目は先週で、萌花の正体を暴くためにこの日も勝手にクローゼットを開けにいった。



そして、今日が三度目。
カーテンで閉めきった部屋の中は、甘い香りが鼻をくすぐって萌花の匂いでいっぱいになる。

部屋の大きな鏡の前に並んで座れば、小さな頃の光景が頭に思い浮かんで、懐かしくて口元が緩んだ。



「ねぇ、イブ。何か思い出さない?」

「なんだっけ?」

「子供の頃、こうやって並んでさ一緒にお化粧したの」

「あー、芽生ちゃんが遊び半分でやったときね」

「違うよ、遊びじゃなくて本当に……」


イブの瞳から溢れる涙を止めたくて、笑って欲しかった。
元気になって、また一緒に遊びたかったからーー。




「まぁ、あの頃は本当に真っ暗だったから……」

「……イブ」

「いや、芽生ちゃんには凄い感謝してる」

「……え?」

「芽生ちゃんのお陰で萌花に会えたんだから」