「私に、ドレスなんてきっと似合わないわ」

フィオナはそう言い、結婚式場の中に入ろうと促す。その時、フィオナは何故かエヴァンの顔を見るのが怖くて俯いていた。

感情を失い、愛すらもわからなくなってしまったフィオナ。幼い頃は、両親の結婚式の話を聞いていつか愛する人との永遠を誓う瞬間を夢見ていたかもしれない。しかし、その瞬間はきっともうやってこない。フィオナはそう思っている。

(こんな私を愛してくれる人はいない。私は、その人に愛を返すことはできないから……)

隣にいるエヴァンの表情を見ないようにして、フィオナは結婚式場で働くウエディングプランナーに話しかけた。

「すみません、結婚式の予約をしたいのですが……」

フィオナが声をかけると、黒いスーツをきっちり着こなしたウエディングプランナーは、フィオナとエヴァンのカップルを見て笑顔を見せる。

「では、こちらでお話を伺います。一生に一度の特別な素敵な思い出を作りましょう!私が全力でサポート致します!」