「エヴァン、ドレスの試着をしたいの?」

エヴァンに女装の趣味などあっただろうか、とフィオナは考える。エヴァンはかっこいい雰囲気の服よりも可愛い雰囲気の服を望んで着ていることは確かだ。今日も、淡いオープンカラーシャツにサスペンダー付きの黒いイージータックテーパードパンツという可愛い格好だ。

しかし、着ているのは男物の服で女性の着るワンピースなどをエヴァンが着ていたり、「着たい」と言っている姿をフィオナは見たことがない。本気で女装をすれば似合うことは間違いなさそうだと思ってはいるが……。

「フィオナ、何でそう思ったのかわからないけど、僕が着たいわけじゃないからね?」

考え込んでいると、フィオナの肩を苦笑しながらエヴァンが触れる。そしてエヴァンは、頬を赤くしながら言った。

「……僕は、フィオナのドレス姿が見たいんだよ」

「えっ……」

フィオナは言葉を失う。結婚式場のパンフレットを見れば、どのパンフレットにも必ず美しい純白のドレスがあった。お姫様のようなフリルのたくさんついたものから、シンプルなシルエットのものまで、女性なら一度は憧れるドレスが結婚式には欠かせない。