Tear Flowers〜小説家と「愛してる」〜

しばらくすると神父が登場し、グレーのタキシードを着たピーターも祭壇の前に立つ。あとは花嫁であるアイビーを待つだけだ。

誰もが幸せな結婚式だと信じて疑わない。新郎のピーターはどこか表情を強張らせているが、それは緊張しているせいだと誰もが思っていた。

刹那、フィオナの頭の中に真実の一部が流れ込んでくる。ピーターの真実だ。

雨の降る薄暗い路地、ピーターが誰かと会っている。相手は黒いフードをかぶっていて、顔はわからない。

『政略結婚なんてふざけたこと言いやがって!俺には他に好きな人がいるんだ!あの人以外、家族になるつもりなんてなかったのに……』

怒りと悲しみを混ぜた声でピーターが言うと、相手が同情する。

『そうだよな。自由のない政略結婚なんて嫌だよね……。じゃあ、全部ぶち壊せばいい』

相手が何かをピーターに渡す。それは、何枚もの黒いバラの花びらと拳銃だった……。

フィオナが現実に戻った時、華やかな音楽が耳に入り込んできた。エヴァンやフリージア、そしてレティシアに多くの参列者が拍手をしている。