「こんな格好、何だか照れくさいな」

恥ずかしそうにしながら、エヴァンはゆっくりと試着室から出てきた。真っ白なタキシードに赤いバラを胸元に飾り、アイビーが「かっこいい!」と笑う。

そう、普通のカップルなら褒めなくてはならない。そして愛の言葉を囁かなくては……。フィオナはそう思い口を開くも、何も言葉が出てこなかった。否、言葉を口にするのをフィオナ自身が嫌がっていた。エヴァンに対して嘘の言葉を並べたくないのだ。

(私、一体どうしちゃったの……)

カリンやアイビーにはあれだけ言えた嘘が、口から一つも出てこない。フィオナはドレスを握り締め、エヴァンを見つめるしかできなかった。

その後、アイビーとカリンと相談しつつ、フィオナとエヴァンは結婚式と披露宴で着るドレスとタキシードを一着ずつ選んだ。

フィオナは、クラシカルで優美なラインのエンパイアラインのドレスを結婚式に着ることにした。エンパイアラインのドレスは広がりが少ない縦長のシルエットなので、身長を高く見せることもできる。そして、披露宴では自身の瞳の色と同じ赤色のドレスを着ることにした。