Tear Flowers〜小説家と「愛してる」〜

「どうやら、結婚式場で起きた黒いバラ事件は、花嫁たちは恋愛結婚じゃなくて政略結婚だったみたい」

「相手を愛していない、だから殺して自由になろうということかもしれないな」

シオンの言葉に空気が重くなる。自由になるために人を殺すなど、決して許されないことだ。簡単に花嫁や花婿が引き金を引けたことに、フィオナの体に寒気が走る。

「レティシアさんたちからは何か報告はありましたか?」

フィオナが訊ねると、サラビアが「ついさっきあったよ」と言いレティシアとフリージアが能力を使って得た情報を教えてくれる。

レティシアとフリージアが潜入した結婚式場は、政略結婚で式場を訪れるカップルが多かったそうだ。そして、そのカップルたちは互いのことを嫌っていたり、何も感じていなかったり、愛を抱いているわけではなかったそうだ。

「そうですか……」

今回の事件の鍵は愛のない政略結婚だろう。フィオナは電話を切り、エヴァンにそのことを伝えるためにトイレの個室から出た。