Tear Flowers〜小説家と「愛してる」〜

しかし、フィオナの心配は無用のものだった。カリンはフィオナが当日のことを考えて緊張していると思ったらしい。

「緊張しなくても大丈夫ですよ。お二人を祝福する場所なんですから」

カリンのその笑顔から、悪意などは感じ取れない。彼女は恋人が殺される事件には無関係だとフィオナは思った。

「では、披露宴会場もご案内致します」

カリンがそう言い、式場を出て行く。フィオナも歩き始めたのだが、エヴァンはその場に止まったまま動かない。フィオナが振り返ると、エヴァンの視線の先には窓があり、窓の外にある木に鳥が止まっていた。

「僕、あの鳥に話を聞いてから行くよ。どうやらあの鳥、よくこの式場に休むために来てるらしくて。事件のこと、何か知ってるかもしれないから」

「わかった」

フィオナは短く答え、式場をあとにする。カリンには急にお腹を壊してお手洗いに行ったという風に説明をしておく。

披露宴会場は、純白で統一されキャンドルが灯されておしゃれな場所となっていた。こんなところで本当に披露宴ができたなら、多くの花嫁が幸せを感じるだろう。