「ありがとう」
彼女は彼氏のにおいのする上着に袖を通して、体を起こそうとする。

すかさず支える彼氏。
「達哉は私に甘すぎ」
彼女の言葉にふっと微笑みながら、きちんと上着を羽織らせる過保護な達哉。
「いいだろ。俺の勝手なんだから。」
「リハビリの先生も、厳しくって言ってたでしょ?」
「そうだっけ?」
「んー違ったっけ?」
達哉の言葉に少し不安そうになる彼女の表情。
「そうでした」
達哉が認めると、一気に彼女の表情は晴れて微笑みに変わる。

「でしょ?私ちゃんと覚えてるでしょ?」
「あぁ。」
風になびく彼女の髪をそっと撫でながら、達哉は微笑む。