「約束の時間まで一時間を切ってる。もう待てない。」
「・・・もっと優しく起こしてくれたらいいのに・・・。」
咲は低血圧でいつも寝起きが悪い。
そんな咲を起こすのはほかの家政婦ではなく、玲の仕事だった。
むしろ、玲にしかできない仕事だった。

毎朝、咲の起床時間の10分前に咲の部屋の前に来る玲。
先に家政婦に部屋の中を確認してもらい、起床時間にはいちを毎朝家政婦が咲に声をかける。
家政婦の声で起きられることは皆無の咲。
結局いつも廊下で待機している玲に、家政婦が声をかけると、玲は部屋に入り咲を起こし始めるのだった。

「着替えはシャワー室に用意されています。15分であがってくださいね。」
布団の上に蹲るようにして体を小さく丸めている咲に玲は告げる。
それでも咲は動き出さず、結局・・・。

「ほら!起きる!動く!」と玲が蹲っている咲を抱え上げてシャワー室の扉の前に連れて行き、乱暴に床に降ろすのも、日課に近かった。