とはいってもすでに1年以上大きな発作は起こしていない。
精神的に安定している状態であると医師もカウンセリングをしながら繰り返し恵理と宏貴に話していた。

ただ、肉体的にも負担のかかる出産という未知の体験に、恵理が発作を起こしかねないというのが医師の見解でもあった。

二人は命を失った経験がある。
その時、恵理は大きく心身のバランスを崩した。
もしかしたらその時の経験がフラッシュバックする可能性もある。

万全な状態で出産が迎えられるようにと、計画的に出産をする日を決めて、心療内科の担当医でもある磯貝医師にはいざというときにフォローしてもらえる体制をとった。

「出産のとき、よく産科の医師や看護師が言うんですけどね、まんざらでもないんですよ。プラスなイメージを持つことは。」
「プラスなイメージ?」
恵理よりも身を乗り出して医師の話に聞き入っている宏貴。