「もうすぐですね」
「はい」
「私にとっては孫のような感じがします。」
深いしわを顔に寄せて微笑む医師。
「生まれたら絶対に抱いてくださいね。」
医師にそう微笑みながら伝えるのは、一橋恵理。

「もちろん。楽しみにしています。」
医師は恵理の担当医である磯貝医師。
「出産の際はサポートしてくださると妻から聞きました。ありがとうございます。」
恵理の隣には夫である、一橋宏貴が付き添っている。

「今日は出産前、きっと最後の診察になりますね。」
「はい」
「産婦人科の医師とも話をして、予定分娩に切り替えてもらいはしましたが、出産するのは恵理さんの力です。」
「はい」
恵理は精神的に不安定になるとパニック発作を起こす可能性がある。