まもなくホームルームが始まって、



ざわざわとしていた空気は沈まった。




私は遠くに見える雪くんをぼうっと

眺めていた。



雪くんは本当に王子様みたいだった。

ふわふわの茶髪、スラッとした身体、

整った小さい顔。

女の子なら誰しも好きになるだろう。


でもそれはやっぱり悲しかった。



「な~に熱くみつめちゃってんの」


ふぇ!?


「マキ!」



「始業式行くよん」


「う、うん」





私は慌てて体育シューズを用意する。

ロッカーをあたふた漁っている





そのときだった






「みき」





ハスキーがかった落ち着いた声





私の好きな声







雪くんだ




「あ、えっ雪くん!?」




心臓が飛び跳ねる



「今日の部活、体育館だって。」




「ああ!そっか!部活ね!ありがとう!」




「じゃ」




「ありがとうね!」




ああ〜雪くんと喋れた〜〜!



でもせっかく雪くんと

おしゃべりできたのに



部活のことかぁ…



するとマキがにやにやしながら

「みきやったじゃん!」


と声をかけてきた。


「残念だけど部活のことでした!」


むぅ



「あはは、かわいいなあもう」



すぐおちょくるんだから














それから、始業式が終わって



地獄の部活に向かうその時だった




「あ、ミキごめん今日、竹とデートだ」



マキが唐突に言い出した。




竹くんはマキの彼氏。



くそぉ、彼氏持ちはいいなあ!



「わかった、楽しんでね!」




「うん、ミキもね!」




ん?



「雪くんの事❤」





もう!

頬が急に熱くなる。





マキはニヤリと笑ってウインクし、


別方向に走っていった。



マキと部活は別だ、



マキは体操部



私は剣道部






私は鬼顧問の待つ体育館に



道着を握りしめ向かった。