華の東京でのひとり暮らしが始まったものの、私は料理が苦手で、自炊するのはあまり気が進まないのが本音だ。

かといって、毎日コンビニ弁当もなんだかなぁ…と思う。

私の部屋から最寄り駅に向かう途中に、サラリーマン御用達の食堂があった。

正直、若い女が一人で入るような雰囲気の店ではなかったが、良心的な値段と美味しい食事の虜になってしまい、夕飯は、ほぼ毎晩そこでとることに。

都会は個性を認めてくれる街だから、あるがままの自分でいても、新しい友達も沢山できて楽しかったが、必修の授業の先生が厳かったので、勉強もそれなりに頑張らないといけない。

そもそも、勉強のために進学したのだから、それはそれでいいのだが。

充実しているように思える日々でも、部屋に戻ると、急に“ひとり”を痛感した。

東京に出て、彼以上に素敵な人との出会いのチャンスはいくらでもあったと思う。

しかし、私は彼を裏切ることができなかった。

裏切らないのは、彼を想っているからなのか、ただの義務感なのか、もうそれすらわからないのに。

サークルの勧誘は凄まじいし、他の学校からの合コンの誘いもよくあったが、出会い目的のようなサークルに勧誘されても、合コンに誘われても、断っていた。

友達に、

「元気ないけど大丈夫?」

と聞かれ、ハッとした。

私はいつから、笑うことがなくなっていたのだろうか…。

素敵なキャンパスライフを夢見て上京したのに。