今宵も甘く咲く ~愛蜜の贄人形~

いったん動きを止めた時雨に、随分と優しく唇を貪られ。首筋を幾度もきつく吸われる。

「結婚でも何でも好きにしろよ」

耳許で笑った気配。

「俺とスズは死ぬまで一蓮托生だ、切っても切れねーんだから」

甘い脅し。
 
「次は首輪でも買ってやる。指輪の代わりに」

目を開けると時雨しかいない、叶がいない。そんな世界は久しぶりだった。いま叶の顔を見たらあたしは。

泣きたくなるような切なさに胸の奥がきゅうと鳴く。
ああ。
すごく叶が足りない。
酸素が薄い。
無いと生きていけない。

「そろそろ叶が恋しくなったろ」

見透かすように言った時雨。

「ひどい女だな、俺を身代わりにすんなよ?」

前に叶にも言われた。違うって言おうとしたら口を塞がれた。塞がれて中を突かれて、朦朧と快楽の波に呑まれて。

来訪者を告げるモニターフォンのチャイムが鳴るまで、現実との境を彷徨っていた・・・・・・。