今宵も甘く咲く ~愛蜜の贄人形~

時間も何もかも麻痺して、自分がここにいる理由さえ。()きつく理性の片隅に叶がフラッシュバックした。だけど時雨に翻弄される自分を抑えなかった。

躰をうねらせて身悶えるあたしの耳許に妖しい笑いがくぐもる。

「俺を好きって言えよ。そしたらもっと、くれてやる」

「っっ・・・ッ、す、き」

「名前呼べって」

言うより優しく顎下を捕まえられ、野性味のある端正な顔立ちが間近で見下ろす。

「しぐれ、が、好き・・・」

息も絶え絶えに繰り返し。

初めて言った気がした。どんな言葉ならいいのか分からなかった、レンアイとは違うから。

でも。
無くなるのはイヤだった。
叶も時雨もいて欲しい。

二人の間にいたい。
二人の中に埋まりたい。

二人の人形でいたい。

これからもずっと。