【完】それは確かにはちみつの味だった。



「マウント取ろうと思って読破済みです」と勝ち誇った顔に、私はため息をつく。

 まさか先を越されるとは思いもしなかった。

 これはもう何か言わないと解放してくれないだろうと、例の“好きなタイプ”というものをしぶしぶ考えることにした。

「・・・タイプって言ってもなぁ」
「背が高い人とか、年上とか年下とか、何かないの?」

 そうは言われても、と2度目のため息をつく。

 恋愛を面倒だと思ってしまう。それが私の致命的な欠点だった。

 自由に出来る時間は本を読んで過ごしていたい。放課後はデートに行く時間があれば図書室に寄りたい。などと、私の最優先はいつだって本だった。自分が恋愛不適合者だとは十分に自覚しているつもりだ。

 加えて昔から表情が乏しい人間だった為、クラスメイトからも“感じが悪くて付き合いが悪い人”だと思われても仕方がないだろう。

 何も弁解するつもりはない。だって全て事実なのだから。

 そもそも、あまり他人に興味を持とうとしなかった私にも非はある。

 数少ない親友たちは、そんな私を丸ごと理解してくれている仏のような人なのだ。優しい彼女たちに、思う存分乗っかってしまっている状態である。