【完】それは確かにはちみつの味だった。



 ぱっと見、チャラくて典型的な陽キャラだけど、根はしっかりとした誠実な人間なのだ。

 コミュ障な私も素を出して気軽に無駄話が出来るくらいだから、実を言うと彼に対する評価は結構高い。

「あ、あと読書家はポイント高いよ。本が好きな人に悪い人はいないもん」
「それはぴーちゃん先輩のタイプの話でしょ」

 目を半開きにさせて呆れたような言い方だが、どうやらそれは照れ隠しらしい。

 彼は頰をほんのり赤く染めて、そっぽを向いていた。歪んだ口元は指先まで引っ張ったベージュのカーディガンで隠されている。

 私ごときに褒められて照れてしまうなんて、そう思うとなんだか成瀬くんが可愛く思えてきた。

 クスクス、と静かに笑いをこぼすと「後輩の純情を弄ばないてくださーい」と不機嫌そうに眉間にしわを寄せる。

 まぁ、耳が赤いから照れているのはバレバレだが。

 いつも彼の手のひらの上で転がされてばかりだったから、少しこの状況が面白くなってくる。

「ごめんって。ちょっと可愛いなって思っただけ」

 そう言うと、君は一層不機嫌になってしまった。