「既に先輩が行く文学部の判定はAだから、安心して良いよ」
「頭が良いんだから、もっと上を目指したらいいのに」
「ひより先輩と一緒の大学行きたいから勉強してるんじゃん」
それ以外に勉強を頑張れる理由がないんですけど、と口を尖らせる。
「来年先輩が留年してくれたら同級生になれるね」
「留年なんてしないから。成瀬くんが飛び級したらいいんじゃない?」
彼は「いや、それこそ無理でしょ」と笑う。
同じ大学に通えば、学年が違っても一緒に授業を受けれる科目もあるだろう。肩を並べて講義を受ける場面を想像しただけでも凄く楽しい大学生活になりそうだと胸が踊った。
一緒に学食でお昼ご飯も食べてみたいし、キャンパス内を一緒に歩いてみたい。帰り道は寄り道をしたり、成瀬くんが20歳になったらお酒を飲んでみるのもいいかもしれない。高校時代は出来なかったことも、それが出来る未来を今から歩いていくのだ。
私も彼も誰も知ることができない不確定な未来が不思議と明るく感じていく。
これも全部、成瀬くんが側にいてくれるからなのだろう。
「まぁ、卒業してからも一緒にいれるんだったら、今はそれで十分かな」
「そうだね。まだまだこれからだね」
そう言ってゆるりと目尻を下げる彼に、私も頬を緩ませる。卒業祝いにどこか春休みにでも遠出しようと提案してくれた。つまり正真正銘、デートのお誘いである。
すごく嬉しいが、その手のワードに全くもって慣れていない私は”デート”というフレーズを聞くだけでもドキドキしてしまう。



