【完】それは確かにはちみつの味だった。




「さすがだね」
「もし逃げたら明日朝から大原ひよりの彼氏ですって叫びながら校舎内を走り回るからね」
「そ、それだけはご勘弁」
「まぁ、半分嘘だけど」

(・・・半分は本気なのか)


  若干不穏な話が出てきたが、それでも「嬉しすぎてちょっと泣きそう」「幸せすぎて死んじゃう」と喜ぶ様子に、私の心はふわふわ浮いて、ぽかぽかと温まり、幸福感で満たされていく。
 
 あぁ、成瀬くんが好きだ。

 今なら何の迷いもなくそう言える。

 抱えきれないくらいに募っていく愛しさを1ミリたりとも溢したくなくて、その隙間を埋めるように彼の背中に力一杯腕を回した。