【完】それは確かにはちみつの味だった。


「あの・・・手を、」
「同じ温度で話してくれるところ」

 突然何の話だろうと口から「え?」と素っ頓狂な声が漏れる。

「以外と恥ずかしがり屋なところ、表情がころころ変わるところ」

 これはさっきも言ったね。と成瀬くんは流暢に言葉を連ねていく。

「あ、あとうたた寝してる時の寝顔も可愛い」
「寝顔っ・・・かわっ、」
「そんなひより先輩が好きだよ」
 
 それは彼からの愛の告白だった。

まるで私が物語のヒロインになったみたいだと錯覚してしまうくらいに、正々堂々と成瀬くんはストレートな思いの丈をこれでもかとぶつけてきた。

 生まれて初めて受けた告白である。どうしたらいいのか分からなくて、何も言葉が出てこない。

 一人で軽くパニックを起こしていると、少々揶揄いが混じった笑い声が聞こえてくる。

「あはは、ひより先輩耳まで真っ赤じゃん。そーいうところも可愛いけどさ」
「い、今名前で呼ぶなんてず、ずるい・・・!」

 いつもはぴーちゃんぴーちゃんと勝手につけたあだ名で呼んでいたくせに、ここぞとばかりに名前で呼ぶ。わざととしか言いようがない。名前を呼ぶだけて照れる私を絶対にチョロい女だっと思っているのだろう。

 言わずもがな彼の思惑通りに、私の心臓は一層跳ねた。

仮にも先輩なのに私で遊びすぎではないか、そう思ったがあまりにも目の前の男が楽しそうに笑うものだから何も言えなくなってしまうのだ。