【完】それは確かにはちみつの味だった。



「わ?!、っと・・・危ない」

 動揺のあまり、手が震えて本を落としそうになった。

 ギリギリのところで間に合ってホッと胸を撫で下ろしていると、くつくつと喉を鳴らして笑う声が聞こえてくる。
 どうやらバッチリ見られていたらしい。恥ずかしくて顔に熱が集まってくる。

(だ、だめだ・・・平常心、平常心)

 しかし、一度自覚してしまった感情は簡単に膨れ上がってしまうものだ。

 やっぱりどこか期待してしまっている自分がいることを知ってしまったから。もし勘違いじゃなかったら、その手を取ってみたい。
 でも不安になってしまう。もしかしたら揶揄い半分でそう言っているだけかもしれないと。
 空ぶって私がそれを本気にしてしまったら、成瀬くんとの関係は今この瞬間に終わってしまう。

 傷つきたくなかった。だから守りに入ってしまった。

 心の中でひたすら願う。これ以上、何もありませんようにと。明日からまた今までのように図書室で過ごして、何事もなく卒業の日を迎えられますように、と。

「好きだよ」
「っ・・・」

 しかし、そんな願いを彼は一瞬で砕いてしまうのだ。

「明日からも、卒業してからも、一緒にいたい」

 いつの間にかテーブルから移動していた成瀬くんは、私の後ろに立っていた。

 踏み台に乗っている私を見上げるようにして立つ彼に恐る恐る尋ねてみる。「何かの罰ゲーム?」と逃げ道を作るように。自分でも分かるくらいに声が震えた。

 すると彼は私を見据えたまま、質問で返してきた。