【完】それは確かにはちみつの味だった。



「そうだね」

 最初に出会ったのは春。

 図書室の窓から一望できる校庭の桜を眺めながらお喋りをした。王子様だと少女漫画のようなあだ名を付けられた彼が、実は読書家だということを知った。意外と良いやつだと思った。

 夏にはクーラーの効いた図書室で涼みながら、いけないことだと分かってはいたが、こっそり2人でアイスクリームを食べた。背徳感も相まってか、とても美味しかった。

 秋には読書の秋だと言って同じ小説を読んで感想を教えあった。それから修学旅行に行った成瀬くんがお土産だと言って某有名神社の学業のお守りをプレゼントしてくれた。凄く嬉しかった。受験が終わった今でも、まだ鞄の中に閉まってある。

 冬には成瀬くんの提案で独り身同士でクリスマスプレゼント交換会をしてみた。どこにでも売っていそうなブラウンのマフラーを身につけてくれた彼は「大切にする」と喜んでくれた。その時に私が貰った橙色のストーンが埋め込まれた可愛いネックレスは大切に飾っている。

 そしてだんだん春にに近づく2月の今も、すっかり日常となった成瀬くんとお喋りする時間を過ごしている。