【完】それは確かにはちみつの味だった。



 そう考えたらやっぱり恋愛とは難儀なものである。外見は誤魔化すことはできないが、中身は隠すことができてしまうからだ。その人をちゃんと理解もせずに、軽い気持ちで付き合うなんて私には到底出来ない。

 最近その話を友人に話してみたら「まだ10代なんだから、もうちょっと気軽に構えててもいいんじゃない?」と若干表情を苦くしていたのを思い出した。

 1人でブツブツと考えたところで、「あ」と声を上げる。

「ちゃんと私をみてくれる人が良いな」
「以外とロマンチックだね、ぴーちゃん先輩」
「愛想笑いとか苦手だし、一緒にいて楽で安心できる人がいいじゃん」

 そう言うと「絶対一目惚れなんてしないタイプだ」と成瀬くんはけらけら笑う。

 言っておくが、一目惚れが悪いとは1ミリたりとも思っていない。

 一目惚れから始まる恋愛小説なんてごまんと読んできたし、一番仲の良い友人も最初は”見た目”から入るタイプだ。恋の始まり方なんていくらでもある。

「それじゃあ成瀬くんのタイプはどんな子なの」と彼に尋ねてみた。

 自分に回ってくると思っていなかったのだろう。驚いて目を丸くする。


「え、俺も?」
「世間的には君のタイプの情報の方が価値があると思うけど」


 きっと成瀬くんがショートカットの女の子が好きだと言えば、次の日には女子生徒は皆揃って髪を切ってくるに違いない。

 家庭的な女の子が好きだと言えば、彼は埋もれるほどの手作りお菓子を献上されるだろう。