【完】それは確かにはちみつの味だった。



「しわだらけでよぼよぼになっても、隣にいてくれる人が良い」

 宝の山に埋もれるように積み重なった本の中で遊ぶ私を、楽しそうに眺める祖父母の仲睦まじい姿は今でもよく覚えている。いつも2人は柔らかい笑みを浮かべては談笑していた。

 祖父が亡くなった時だって、祖母はいつものように綺麗な笑顔で笑っていた。

「最期まで笑顔で一緒に時間を過ごそうって、2人で決めたのよ」と言っていたっけ。素敵だなと、その言葉は今も覚えている。

「先輩らしくて良いと思う」
「そう、かな・・・ありがとう」

 きっと成瀬くんが求めていたような答えではないけれど、彼は馬鹿にせずに「とても素敵な人だったんだね」と褒めてくれた。

 自分が褒められたかのように嬉しくなって、じわりと心が温かくなった。

「まぁ・・・顔で好きになることはないかな、多分」
「良かった。黒髪メガネの年上とかじゃなくて」

 仮に私に告白した人間が黒髪でメガネの年上イケメンだったとしても、性格に難がある人だったら付き合うことはないだろう。

 別にイケメンが嫌いとか、そういう訳ではない。格好良いと思う男性俳優だって人並みにいるし、顔が良いことに越したことはないとも思う。まぁ恋愛の意味での好きとはまたベクトルの違う話になるが。