キミを描きたくて

「ええっ、あの王子と!?」

「うぅ...」

「依茉、何かされたら絶対言いなさいよ」

「ありがと美桜ちゃぁん...」


依茉の味方だからね、そう言って抱きしめてくれる。
美桜ちゃんの腕の中は、いつも落ち着く。


「美桜ちゃんの匂い好き」

「...何この子かわいい。」

「美桜ちゃんがいるから頑張れる気がする」


今日も作業頑張るよ、そう言ってキャンバスなど全て持って、学校を歩き回る。

どこからの風景を描こうかな。

...昇降口?校庭?花壇?


「......あ」


私が最終的に見つけたのは、ちょうど良い感じに日が差し込む教室だった。

下描きさえ出来上がれば、この教室に夕日が差し込んで、いい雰囲気になるだろう。

非抽象を描くのは久しぶり。
この学校の美術は選択、かつ2年からなので、最後やったのは中学だ。


「失礼しまーす...」


そう教室に入ると、一人の男子生徒が眠っていた。


「......」


寝てるし、大丈夫だろう。
キャンバスを立てて、えんぴつを取り出す。

シャッシャと、キャンバスを擦る鉛筆の音だけが響く。

たまに、サッカー部の声が聞こえる程度だ。