キミを描きたくて

「ええっ、と...お名前、なんですか」

「へぇ、僕の名前も知らないんだ?」

「え?はい。」


話したことないんだから、結構当たり前の話ではないだろうか。


「ごめんね、この子借りてもいいかな」

「も、もちろんもちろん!」


姫ちゃんファイト!!なんて応援してくる。
え?なんて聞き返した。


「さ、行こうか。少し話したいことがあってね」


そう言われてついていく。

横顔を見ると、やはり端正な顔立ちだ。
彫りも適度で、鼻の高さも良い。パーツの比率も良くて、デッサンや人物画などの材料には完璧だ。


「なぁに、僕の顔みて。」

「いいえ...なにも」

「人物画描きたいって思った?」

「...はい」


そう言うと、ふふっと笑う。


「悪いけど、僕二次元化されるのは―――」

「やはり、あなたの顔は水彩や油彩よりも、木炭ですね」

「......は?木炭?」

「え?はい。デッサンなどでよく用いられるんです。色があった方が良いかと思っていましたが...白黒でもパーツは目立ちますし、十分ですね」


目を見開いて、私を見つめる。

何を驚くことがあるんだろうか。


「人物画の件、考え直して貰えませんか?
そ、その...あなたの顔みて、ビビッときたんです」