キミを描きたくて

高校に入ってからできた親友は、馬鹿だった。
…いや、勉強ができないとかじゃなくて。

むしろ、運動以外ならサラッとやってのけるような、憎たらしい子だった。

たった部員7名の美術部。
その中に、一際、輝く才能の持ち主がいる。


私の親友こと、早見依茉。
非抽象は好まず、抽象画ばかり描いて、中学の時のコンクールでは何度も目にした名前だ。

日本とフランスのハーフで、容姿端麗。
しかしその中身は、見た目にそぐわないほど、内気だった。



「私、美桜ちゃんと絵があればそれでいいや」


何度も聞いた、親友の言葉。
しかし「非抽象をたまには描け」という言葉をきっかけに、生徒会長に絡まれる羽目になって、今では全然私との時間はなくなった。



「先生、依茉が…____」



職員室の養護教諭に、簡潔に話す。
そう言うと先生は颯爽と廊下の奥に消えていった。


「…そうだ、お弁当、美術室に置きっぱなし」


美術室を開くと、ツンとした香りがする。
そして、彼女が先程まで倒れ込んでいた机の上に、スケッチブックがあった。